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OBAKE HUNTER GIRLISH #1 『壺中煉獄』 - The Infernal Biotope -
一、準美万端
「仕事だ! 楽運」
永のけたたましい声が、わたしの部屋に響いた。今朝の事だ。
「うう……、こんな朝からですか? 珍しいですね、永」
「丁度良いじゃないか。朝飯前の運動には持って来いだぜ」
どこか楽しそうな顔の永を他所に、わたしは嫌な予感を感じた。
わたしたちのような雑魚祓穢(ざこはらえ)を動員する、緊急の用件――?
「では支度をします」
「支度はいい。おれが見繕ってやる」
永はいつもように乱暴だ。わたしの手を引いて足早に向かったのは馴染みの武具屋だ。
店主のおやじとの挨拶もそこそこに、奥の部屋へとずずいと這入っていく。
「これかな。いや、こっちかな」
永はわたしの防具の品定めにご執心だ。
わたしは動きやすければ何でもいいのだけれど。 「何でもいいってわけにはいかない。いいか楽運。 ここの防具は同じように見えて、全部違うんだ」
そうでしょうか。一体どこが? と問うと
「味わいだよ」
との答え。
いつもの問答だが、相変わらず永の言うことはよく分からない。
かくして雑魚掃討の任を担うわれわれ二名、アルハ永と楽運は煉獄へと駆り出された。
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