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OBAKE HUNTER GIRLISH #2 

『桜金滅鬼』 - The Blade of Full Petal Jacket -

​七、縦無尽

「でぇぇありゃぁぁぁぁああああ!!!」
裂帛の気合とともに降りぬかれた長刀で、岩の巨体は瓦礫と化した。

「永!その刀は…!」
「『二重羽々斬剣・改』。この春を丸ごと買い取らせてもらった!」
衝撃波が地を駆ける。
大地を揺るがしたのは超重量オバケの倒壊か、
はたまた少女の放った轟斬か。
なんでも、永はあの後キャラバン連中と意気投合、
今年獲れた桜金すべてを買い取り、折れた二重羽々斬剣を
鍛え直してもらったらしい。

そういえば、聞いたことがある。
桜狩りの一族は対サクラ戦のスペシャリストであり、
花弁をアクセサリーに変える錬金術師であり、
それと同時にサクラを斬るための優れた刀鍛冶であるということを。

「しかし、ひと春ぶんの桜を全部って、一体いくらしたんですか…」
「気にすんな。必要経費だ。それより見ろよこれ!」
永はご機嫌に刀身を掲げて見せる。
儚げな薄桃色をまとった切っ先に花弁がひとひら触れ、
真っ二つに裂かれて落ちていった。

使い手である永もまた『永遠』を名に負いしもの。
その刀身が『花』を、その名が『不変』を司る。
永が桜の化身たる刀を振るえば、そこには
――栄華を司るコノハナノサクヤヒメ
――永遠を司るイワナガヒメ
この二つが揃い、山の神であるオオヤマツミがその身に顕現する。

こと山地戦において最強のアドバンテージを以てして、
見事、不滅の怪を討ち取ったのは今回も、
何よりも自由を重んじる「オバケに対する最終兵器」たるアルハ永だった。

 

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