OBAKE HUNTER GIRLISH #2 

『桜金滅鬼』 - The Blade of Full Petal Jacket -

​六、眉怒目

 桜は、かつては無害で美しい植物だったという。

 しかし、いつしか生物・無機物問わず破壊へと導く毒を獲得した。そしてその毒性ゆえに、人の住む市街地から完全に駆逐された。
岩は、ただ邪魔だから砕かれ、人の住処はすべて平地である。

しかし山奥にはその両方が未だに残っている。
桜狩りの一行が旅団であるのは、桜が移動するからだそうだ。
日本の南端から北端まで、桜の満開になる時期に合わせて旅をしつつ狩りを行う。
それを『桜戦線』という。

とすれば、桜の花は短命なのだ。
見事に見える満天の花天井も、じきに散ってしまう。
その儚ささえも魅力というのなら、やはり花と岩は対極の存在だ。

 

大岩の怪は
『出蛭(デビル)』の高温を以てしても、
『入蛭(イビル)』の滅光を以てしても、
両断することは敵わなかった。

岩は不変にして不動、鋭俊にして永劫の象徴である。
ただ固い岩であるだけでなく、由来が顕現して
この山で完全な物理防御を得ているのだろう。

――口惜しや、この醜さが恨めしや

岩巨人は巨大な腕(かいな)を振り回し、周囲の桜ごとわたしを薙ぎ払おうとする。
このまま切り結んでも埒が明かない。
打つ手なしか…!

そう思えたときに、岩の天頂付近から裂け目が生じた。

「待たせたな楽運!完全復活だ!」
突如現れた永が手にしていたのは、元通りの長刀。
いや、その刀身を桜色に染めた新生『二重羽々斬剣』だった。

 

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