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OBAKE HUNTER GIRLISH #2 

『桜金滅鬼』 - The Blade of Full Petal Jacket -

​四、右

 桜金は、木に生る金属だ。
しかしながら、桜金の原料となる桜の花弁は厳然たる植物である。
植物の花弁を金属に変える――
それは、失われた技術。
『錬金術』に他ならない。

「ヤッパがねえんじゃ、仕事になんねーよー!」
武器を失った永はへそを曲げてしまった。
彼女は桜狩り一座の酒宴に交じって、私にだけ任務続行を命じたのである。
早くもヨシノガリもちと意気投合したようだが、酒を飲まなければいいが……。

単身、山奥へと分け入ったわたしを、サクラたちのさざめきが包む。
言うまでもないが、桜には毒がある。
それは、精神を侵す毒だ。

心が騒ぐ――

花に魅入られた者は、最後には花にその身を捧げる。
桜の花は破滅の導き手。
そのいざないからはたとえ無機物であっても逃れることはできない。
二重羽々斬剣ほどの業物が折れたのも、その「死にたくなる」衝動のせいだろう。
桜の木の下には死体が埋まっているというのは、その精神毒のせいだ。

しかし、第一種保護霊獣であるわたしには、桜毒も効果をなさない。
桜たちが騒ぐ。
なぜこの者は「死のうと」しないのだと騒ぐ。

わたしは桜に身を捧げるわけにはいかない。
わたしが身を捧げるのは友であり、主である永だけだ。
ここのオバケを獲る邪魔をするのなら、
桜だって屠るまでだ。

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