OBAKE HUNTER GIRLISH #2 

『桜金滅鬼』 - The Blade of Full Petal Jacket -

​二、臨機

「永ちゃん。楽ちゃん。仕事や。今すぐ支度してもらうで」
ウェイトレスの可憐な制服に身を包んだのは妙齢の女性、アルハ出威(イズルイ)。
わたしたちの上司だ。


「出威よぉ。あんたいつも急なんだよな。それにその服装、わざわざ用意してるわけ?」
「衣装は擬態みたいなもんや。どや? バレてへんやろ?」
「出威さん、店員のかたが見ていますよ…」
わたしはおずおずと声をかけた。突然、見知らぬウェイトレスが現れたので、店員が訝っているのだ。
「まあええわ、これが今回の作戦概要や」
トレーからテーブルに置かれたファイルには『第特級オバケ掃討作戦―コード"桜"』の文字。
「なんて読むんだ、この字は。常用漢字じゃねえな。失字(ロストミーム)か?」
「『さくら』っちゅうんや。永ちゃん知らんのかいな。ごっつい宝石の原料となる植物っちゅう…」
「わたし、知っています。『桜金(おうごん)』といって、近年特に人気を集めているとか」
「さすが、楽ちゃんはお利口さんやなあ」
出威さんはそう言うと頭をわしわしと撫でてくるので、わたしはくすぐったい気持ちになる。
それを見て永は不満そうに口をへの字に曲げた。
「なんでえなんでえ。桜のことなんざ知らなくったって、オバケは狩れるんだ」
言うが早いか席を立ち、ずかずか歩き出す永。
「大通りに『翼船(はね)』をつけてあるさかい、楽ちゃん一丁たのむわ。あ、支払いもまかしときー」
わたしはふきのとうパフェに後ろ髪をひかれながら、永のあとを追うことにした。
我らが上司はといえば、自分の仕事は終わりといわんばかりに腰を落ち着け、
メニューを吟味している(まさかあの格好でオーダーするつもりなのだろうか…)。

アルハ出威(イズルイ)。
得体のしれない大人だが、
永をやる気にさせることに関しては右に出るものはない。
よくできた指揮官なのである。

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